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ふくらみに憧れて (Res:12)

1 名前: 0CH8r0HG.A 投稿日:2008/11/23() 21:06 ID:F1f6F4po
ジャンル:ギャグ?
長さ:10レス
お題:二つの膨らみ

感想ください><

2 名前: ふくらみに憧れて  ◆0CH8r0HG.A 投稿日:2008/11/23() 21:08 ID:F1f6F4po
「貴方しかいないんです!」
 とか、突然そんなことを言われても困るわけで。
 しかもそれが、妖精を名乗る羽を生やしたちっこい男の子だったりするから、尚更だ。
「えーと……」
 口をつぐむ私の意志なんて、もうどうでもいいかのように、手の平サイズのその少年は私に
向かって捲くし立ててくる。
「お願いします! 貴方以上に相応しい人はいないんです! この、女性の発育が進んでいる
現代において、貴方以上に美しい平面をその年齢で維持されている方は他に……」
 無言で、目の前に浮かんでるそれを下にべちゃっと叩きつけた。
「い、痛いじゃないですか……」
「次に同じようなこと言ったら、この程度じゃすまないからね」
 言った後で鏡を見る。バスタオルが巻かれた、スレンダーな体が目に入った。腕を組んだま
まポーズをとる。悪くない、と思った。しかし……
「夢中になっているところを悪いんですが、その組んだ腕をほどいてみてくださいよ。タオル
がすとーんと落ちるでしょ? すとーん! すとー……」
 思い切り踏ん付けた。蛙が断末魔にあげる音はこんな感じだろうか、なんて考える。
「凹凸の無い体で悪かったわ、ねっ!」
 そもそも、風呂上りの脱衣所にいきなりやってくるとは、何て失礼な奴だろう? タオルを
巻く前だったなら、有無を言わさずに踏み潰していた所だ。
 ぐりぐりと、かかとに力を込めながら巻いていたバスタオルで頭を拭く。体重をかける度に
「ぐえっ」と反応が返ってくる所をみると、とりあえず死んではいないだろう。まるでゴキブ
リだ、と思った。
 
「あんまり驚かないんですね?」
 着替えを終えて自分の部屋へ。ライムと名乗ったそのちびっ子は、ボロボロになりながらも
そう首をかしげる。
「これでも結構驚いたけど、それ以上にムカつくことを言われたからね」
 私は、つまみあげたそいつの顔を見ながら言った。
「すみません。女神様の命を受けて、この薄汚れた地上を虫のように這い回ること幾星霜。や
っと理想の相手にめぐり合えた喜びが爆発してしまいまして……」

3 名前: 文才無し 投稿日:2008/11/23() 21:09 ID:F1f6F4po
「む、虫ねぇ……」
「はい! しばらく見ないうちにこの地上は腐りきってしまいました。こんなに可愛らしい男
の子を捕まえて、虫けらとか言いつつ殺虫剤をかけるんですよ? 終わってます!」
「まぁ、気持ちは分からないでもないけど」
 両方の意味で……と心の中で付け加えつつ、相槌を打つ。ライムはさらに続けた。
「大体ですね! 腐ってるといえば僕の上司である糞ババアも一緒ですよ! こんなか弱い僕
に、こんな過酷な命令を下すなんて。神の皮を被った悪魔です!」
「そう、それそれ。女神とか妖精とかよく分からないんだけど?」
 私が訪ねると、ライムはそうだった、と照れ笑いを浮かべながらとつとつと語り始めた。
 自分が主である女神の命令で地上に目的を果たしにきたこと。しかし、予想以上にそれは困
難な命令で、未だ達成できていなかったこと。今回私を発見したことでそれが達成できるかも
しれないこと。
 所々に上司への愚痴と文句を挟みながら、そう説明した。
「いまいち要領を得ないんだけど、具体的にその『命令』っていうのは何なのよ? そもそも、
何で私じゃなきゃいけないわけ?」
「それは……先ほども申し上げた通り、貴方が理想的なスタイルの持ち主だからなんです。肉
体年齢も、上司に凄く近いですし。ここだけの話ですが、うちの上司というのが貴方に劣ると
も勝らない平面ボディの持ち主……ってあだだだ!」
 両手で無礼者を雑巾のように絞り上げる。中々良い声で鳴くものだ。
「でぇ? その平面ボディの持ち主が、何だって?」
「ぐえっ! その体に合う特別性の水着を作り上げるように……あいだだだだ!」
「……水着?」
 少し力を緩める。と、ライムはその隙をついて、私の手の中から逃げ出した。
「あだだ。あー、痛かった。そうです。水着です。近々、僕達の住む世界で、神々の権威を競
い合う競技会が開かれるんです。そこでは、水着審査……というのもありまして」
「……あ、案外俗なのね。神様って」
「というか、うちの上司が見栄っ張りなんですよ! 同僚に同じ位根性の腐った女神がいるん
ですが、それと張り合ってるんです!」
 腕を組み頬を膨らませるライム。妙に可愛らしい仕草だ。
「へ、へぇ。何か想像つかないな……はは」

4 名前: 文才無し 投稿日:2008/11/23() 21:10 ID:F1f6F4po
「だから、それまでに水着を完成させて、女神に献上しなきゃならないんですよ! お願いし
ます! 協力してくだ……」
「いやよ」
 言葉を遮った。途端にライムは泣きそうな顔になるが、そんなもの知ったことではない。
「初対面でいきなり現れた怪しい生物の頼みなんて聞けるわけないでしょ。というか、私くら
いの……その……ペチャパイなら、探せばいくらでもいるわよ。お断り」
「そ、そんな! 貴方以上の摩擦係数ゼロボディなんて、地上には……」
「それ以上言ったら、叩き潰すわよ?」
 半眼で睨み付ける。流石に学んだのか、両手で口を覆いつつ何度も頷くライム。
「大体ね。女神だか何だか知らないけど、山と谷の無い身体だからって、卑屈になってるのが
気に入らないわ。せめて気持ちだけはメリハリを持つべきよ」
 拳をぎゅっと握り締めて、力説する。ライムも、私の信念に満ちた態度に圧倒されたのか、
しばらく俯いて肩を落としていたが、少ししてから納得したように顔を上げた。
「……分かりました。そうですね。貴方は、そのまな板と一生付き合う覚悟を持ってるんです
よね。諦めて他を当たります。完成した暁には、貴方の胸を大きくしてあげようと思っていた
んですが、どうやらそんな交換条件は貴方には魅力的に映らないようですし」
 ……ちょっと待て。私は、窓の外へ、それじゃあと出て行こうとするライムの胴体を引っ掴
んだ。
「うわっ! な、何ですか!」
「今、何て言った? 成功したら、何を大きくするって?」
「え? あの、胸……ですけど。え? あれ? 何でそんなに怖い顔で笑って……?」
 訝しげな顔でライム。私はそれにはもう答えることもせず、黙っていた。駄目元でやってみ
るくらいは良いわよね、そう思いながら。

「だからって、これは想定外なんだけど?」
 目の前に海が広がっている。青い空、白い雲、打ち寄せる波と、たくさんの人が見える。
「だって、実際に確かめてみないと、分からないじゃないですか」
 ライムは何を今更といった顔で私を見た。引き受けることを決めたのが昨日の夜。それから
一晩明けて、早速連れてこられたのが小学生以来来ていない海だった。
「今日、ここで水着コンテストがあるんですよ! それに出ていただきます」

5 名前: 文才無し 投稿日:2008/11/23() 21:11 ID:F1f6F4po
「え、ちょ、ちょっと! 冗談でしょ!?」
 何故今更、自分の体を衆目に晒さなければならないのだろう? 約束したとはいえ予想外だ
った。
「大丈夫ですよ! 僕が用意した水着がありますから。貴方の一本気な体もしっかり魅力的に
見せてくれるはずで……」
 全てを言わせることなく、ライムを砂浜にめり込ませる。日差しは眩しく、私の心を憂鬱に
させた。
「カバー……ね。はは」
 溜息が漏れる。ライムは何事も無かったかのように砂から出てくると、どこから取り出した
のかその体には不釣合いな大きさの水着を手渡してきた。
「はい、どうぞ! これです!」
「へぇ、これが……ってちょっと待て」
 青を基調とした、ワンピース。そこまではいい。生地もかなり上等なものを使っているのだ
ろう。着心地も悪く無さそうだ。ハイレグに関しても、無駄毛の処理はすでに済んでいるので
問題は無い。
 だが唯一、そして最も大きな特徴が、私に待ったを掛けさせた。
「何なの……これ」
 私は水着を手に持ちつつ尋ねる。ライムは得意気に二つ頷くと、私に笑顔を見せた。
「勿論、肉まんです!」
 水着の内側、胸を覆う部分にホカホカと湯気を立てる肉まんが二つ。これでもか、とばかり
に存在をアピールしていた。

「エントリーナンバー八番の方! 壇上へどうぞ!」
 言われて私はステージ上へと歩を進めた。その回りに出来た人垣から、指笛やら、どよめき
やら、羨望の眼差しやら、嫉妬の歯軋りが飛んでくるのを感じる。
「これは見事な曲線です! スリーサイズは上から、92・59・89!」
……悪くない。素直にそう思ってしまう。勿論、これは私自身の身体ではないけれど。
 ライムに急かされながら身に付けたその水着は、私の体を見事に変貌させていた。ウェスト
を細く、ヒップを持ち上げ、胸の部分にあった肉まんは完全に私の胸と同化し、深い谷間を作
っている。

6 名前: 文才無し 投稿日:2008/11/23() 21:11 ID:F1f6F4po
 さっきまで上がっていた湯気も今はなりを潜め、ポーズを取った拍子に胸がたゆんだ。
「こ、これは大変セクシーです! 出来れば私も司会業など放り投げて、目の前の女性を口説
きたいところ!」
 サービスしすぎたか、と少し後悔。瞬間、どこからともなくライムの声が聞こえてくる。
(良いじゃないですか! とても目立ってますよ!)
 どうやらその声は私にしか聞こえていないようだった。私は心の中で答える。
(ふ、ふん。まあね。悪くないわね)
(そのまま、優勝しちゃってください。そしたら、もう仕事は終わりです!)
 始まる前はどうなるかと思ったが、案外あっさりとことが片付いてしまったことに安堵する。
 何とも馬鹿馬鹿しい話ではあるが、この肉まん水着を見る限り、あのライムが言っているこ
とは本当なのだろう。すると、私はこんな偽物ではなく、本物の巨乳を手に入れることが出来
るのだ。
 思わず持ち上がりそうになる口元を押さえ、心の中だけで笑う。今まで、この身体のお陰で
味わってきた数々の屈辱が頭を過ぎった。

 審査も滞りなく終わり、発表の時間がやってこようとしていた。司会者がマイクを片手に、
私達候補者の前にやってきた。
「さぁ、皆様。お待たせいたしました! いよいよ結果発表です! 第二十四回常夏水着コン
テスト、優勝者は……」
 バックで響くドラムロール。観客の視線と司会者の視線が一斉に私に集まる。
「優勝者は、エントリーナンバー八番の……」
「待て!」
 突如として響いた声。物凄い風が吹いて、ステージ上は滅茶苦茶になる。それらが、優勝者
を告げようとするアナウンスを遮った。
(とうとう、来たか!)
 ライムが悔しそうに言う。来た、とは一体どういうことなのか? 私はライムに問いかけた。
(昨日言ったでしょう? うちの上司と張り合う、性格腐った女神がもう一人いるって。僕が
特別製の水着を作っていると聞いて、妨害に来たんでしょう。予想できたことでしたが、もう
ちょっとだったのに……!)

7 名前: 文才無し 投稿日:2008/11/23() 21:12 ID:F1f6F4po
「あんた、何を当然のように言ってるのよ! 妨害があるかもなんて、こっちは聞いてないわ
よ!」
 思わず怒鳴る。ステージの周りにいた者達は皆、すでに逃げ出していた。ライムはそれを確
認してから、再び私の前に現れる。
「今は、言ったとか言ってないとかの話は抜きです! とりあえず、これから来る敵を倒さな
いと!」
「て、敵!? 敵ってどういうことよ!」
「相手は多分、この水着を破壊しようと神の尖兵をけしかけてくるはずです! それを倒すん
です!」
 ライムが言い終わると同時に、凄まじい速度で黒雲が空を覆った。稲光が輝き、時折轟音も
響き始める。
「愚かな人の子め。性悪女神が使い魔の口車に乗り、わらわの邪魔をしようてか!」
 雷に負けないほどの大音声が私の耳を叩く。
「神の怒りを知るがいい!」
 瞬間、目の前が真っ白になる。空から、歪な曲線を描きつつ落ちてきた稲妻は、私の目の前
十メートルほど先の砂浜に穴を穿った。
「な、何なのよ、これ……!?」
 激しい風と、舞い上がった砂と、轟音。それらが少し収まった時、その中心には光沢のある
身体でポージングを決める、長い黒髪のグラマラスな女性が立っていた。

「お前か。我が主に仇なす愚か者は」
 胸の谷間をアピールしつつ、何やら恍惚の表情を浮かべる女。
「私は主の忠実なる僕。我が主の命により、お前の纏う面妖な水着を破り捨てて、神に逆らう
罪の重さを恥辱として与えてやろう」
 言って、大きく息を吸い込んだ。思わず後ずさりする私。ライムはそんな私に向かって怒鳴
り声を上げた。
「何逃げてんですか! 戦って倒さないと!」
「ば、馬鹿なこと言わないでよ! あんな色気むんむんの気持ち悪いおっぱいオバケに、戦い
を挑めっていうの!?」

8 名前: 文才無し 投稿日:2008/11/23() 21:13 ID:F1f6F4po
「ふ……安心せい、殺しはせぬ。慈悲深い我が主の言葉に、一寸のガキにも五分のおっぱいと
いうものがある。寛大な主に感謝せよ」
「……ああん?」
 頭の中で何かが切れるのを感じる。私は、不愉快な言葉を吐いた肉の塊を睨み付けた。
「あれは、僕の上司が昔言われた言葉です。悔しくないんですか! あんなことを言わせてお
いて! 言い返してやりましょうよ! 五分もあったら苦労しな……ぐえっ!」
 目の前を飛ぶ羽虫を叩き落してから、正面に向き直る。あら、怖いと女は私にいやらしく笑
いかけてきた。 
「で? どうしようっていうのよ、オ・バ・サン!」
「……ほう、身の程知らずとはこのことか。貧相なガキめ。見るがいい!」
 私の言葉に、女はコメカミに青筋を立てたようだった。
 手をゆっくりと前に出して、目の前で指をパチンと鳴らす。と、その瞬間私の横に立ってい
たビニールパラソルが弾け飛んだ。
「え……あれ? そ、そんなのありなわけ?」
 頭に上っていた血が、一斉に引く。バラバラになったパラソルを見つつ、女は微笑んだ。
「おうおう、失敗か。しかし安心せよ。動かねば死ぬことは無い。なぁに、その水着にパラソ
ルと同運命を与えてやるだけだ」
 言って口元を押さえる。下品な笑い声に、私は舌打ちした。
「ちょ、ちょっと、ライム! 倒せって言うからには、何か方法があるんでしょ!? いくら
何でも、ノープランであんなバケモノ倒すなんて無理よ!」
「当たり前です! こんなこともあろうかと、その水着には特殊な力が二つ備わっているので
すから!」
 いつの間にやら復活したライム。会った時から思っていたが、こいつも大概タフだ。
「まず、その水着の胸元を引っ張ってください!」
 言われた通りに引っ張る、と、胸に張り付いてた肉まんが剥がれ、形を取り戻した。目に入
った自分本来の体は、私を少し残念な気分にさせた。
「で、で? これをどうするのよ!?」
「まず、右側の肉まんをちぎってみてください!」
 私は、すぐにそれを実行した。目の前にいる女は、警戒したのかすっかりと表情を変え、体
重を後ろに掛けている。すぐに逃げられるように、だ。

9 名前: 文才無し 投稿日:2008/11/23() 21:13 ID:F1f6F4po
「よし、オーケー。取ったわよライム。ふふ。これで、どうすればあいつを倒せるわけ?」
「それをお腹が空いている子供にあげるんです! 『私の胸をお食べ』という言葉と共に。た
ちまち子供は泣きやんで、貴方はまさに某ヒーロー! 肉まんのヒロインだから、肉ウーマン!
あるいは子の字を付けて肉マン……ぐえっ!」
 私は千切ったそれを投げ捨てて、全力でライムの首を絞めた。今度ばかりは本気で殺すつも
りだった。
「お・ま・え・は……」
「ぐ、ぐるじい。ぎ、ギブギブ……」
「はっはっは! 神の使いの前で、漫才とはな。滑稽を通り越して、哀れにすら見えるぞ!」
 私は、力を緩めずに、もう一度だけライムに声をかけた。
「……いい? ラストチャンスよ? もし、今度こんなくだらないことをしたら、水着をバラ
バラにされる前に、アンタをバラバラにするからね。あいつを倒す手段は無いの……?」
 ライムは、私の手の中で必死にもがきながら、息も絶え絶えに答える。
「ひ、左を食べて、あ、あいつを殴ろうと……してみて……しぬ……」
 そこまで聞いたところでライムを投げ捨てる。
「頼むから、まともなことになりなさいよ……」
 私は、素早く左側のおっぱいを千切ると、口に放り込んだ。
「ふふ。次はどんな冗談を見せてくれるんだ? 出来れば、笑えるのを頼むぞ? あまりに可
哀想で、泣けてきそうなんだ」
 女はまだ笑っている。私は、軽く唇を噛んで、何か変化が起きるのを待つ。しかし……
「……あれ?」
 何も起こらない。美味しい、くらいだろうか。そんなことは、凄まじくどうでも良かった。
「何だ? 結局、あれだけ騒いで何もないのか。愚かな女神に仕える使い魔はやはり無能だな。
はっはっは」
 言って、さっきのように指先を私の目の前に持ってきた。
「お遊びは終わりだ。次は外さない。水着がバラバラになったら、ほれ。その辺に転がってい
るタオルでも使うんだな。……まぁ、水着を失ったその身体に隠す価値があれば、だが」
 く、悔しい。
 巨乳に釣られ、いきなりわけのわからないことに巻き込まれた挙句、散々馬鹿にされて恥ま
でかかされるなんて。せめて、目の前のムカつく女を一発ぶん殴ってやりたかった。

10 名前: 文才無し 投稿日:2008/11/23() 21:15 ID:F1f6F4po
「では、フィナーレだ」
 私は、思わず駆け出していた。もう、まっぱにされても、一発くらい食らわせてやろう。そ
う思って拳を繰り出す。
「貧乳とか、貧相とか、これ見よがしな巨乳とか、インチキ臭い超能力とかっ!」
「なっ……! おい、動くな! 手元が狂ったらどうする!?」
「うんざりなのよ、馬鹿っ!」
 たまっていた鬱憤をすべて拳骨に乗せて、前に。すると、その拳がとんでもない大きさに膨
れ上がった。
「なっ! ええっ!?」
 私の視界を覆った拳は、突然のことに慌てふためく女へと、そのままの勢いでぶち当たり……
「何だとおっ!」
 はるか彼方へと、吹っ飛ばしたのだった。

 着替えも終えて、暮れかけた夕日をバックに、私は海を見ていた。
「左の肉まんは、食べれば身体の好きな箇所の大きさを自在に調節出来るのです。二倍だろう
が、三倍だろうが、好きなように。さっきは、相手を殴ろうとした時に無意識で拳骨を大きく
したんでしょうね」
 したり顔で説明するライム。本当にタフだ、と思った。
「とりあえず、水着は完成だということは確認できました。後は、これを上司の下へ持ち帰る
だけです。本当にありがとうございました!」
 言って頭を下げる。私は、無表情で向き直った。
「約束どおり、おっぱいを大きくしましょう。というか、もうそれは可能になっているはずです。
さっき左の肉まん食べましたよね? あれで胸も操れるはずですよ!」
「胸……ああ、そっか。そういう約束だっけ」
 色々なことがありすぎて、忘れかけていた。さっきまでの、グラマーな身体が懐かしい。

11 名前: 文才無し 投稿日:2008/11/23() 21:17 ID:F1f6F4po
「それでは、僕はこの辺で! さようなら!」
 ライムは笑顔で言い残し、一度もこちらを振り返ることなく、空の上へと消えて行った。

 こうして、この嵐のような出来事は幕を閉じた。疲れきっていた私は家に帰り、そのままベ
ッドに倒れこんでその日は寝てしまった。
 やりきった心地よい疲労感と、手に入れた超能力に満足しながら。
 次の日の朝、私は悲しい現実の壁にぶち当たり涙を流すことになる。ライムはこう言ったのだ。
二倍だろうが三倍だろうが思いのままだ、と。
 ゼロにいくら数字をかけても、結果はゼロだったのである。
 鏡の前で必死に祈る私は、悲しいくらいに平らだった。   


 おわり

12 名前: 0CH8r0HG.A 投稿日:2008/11/23() 21:17 ID:F1f6F4po
以上です
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