掲示板に戻る 全部読む 1- 最新50アリスの使い魔 (Res:6)
- 1 名前: 名無しのサーセン 投稿日:2008/01/16(水) 01:33 ID:1THC3pus
- 題名:アリスの使い魔
備考:色々言いたいことはわかる。そしてその考えは正しい。
備考2:某小説をアレンジ。もちろん、練習用なの。
- 2 名前: 名無しのサーセン 投稿日:2008/01/16(水) 03:31 ID:1THC3pus
- 「あなた誰なの?」
透き通る蒼い空と深緑な山々をバックに、悠人(ゆうと)の顔を食い入るように覗き込んでいる少女が言った。どう考えても悠人より年下だ。白いマントに、赤いブラウス、グレーのプリーツスカートを着た華奢な体の上から興味津々と覗き込んでいる。
顔は……。将来有望。桃色ブロンドの髪と雪見だいふくのようなもちもちした土台くりくりした桜色の目が踊っている。幼女みたいだ。というかヨウジョである。人形のように可愛い外人の幼女さんである。
しかし、彼女は何処から来たんだろう。近所で見たことない。
悠人はどうやら棒立ちらしい。視線を少女から外し、あたりを見回す。
ごわごわした装飾だらけの大人達が自分を物珍しそうに見ていた。豊かな草原、川のせせらぎ。どこか懐かしいにおいがするこの場所はまるでおとぎ話の世界だ。
頭痛がする。悠人は頭を振りながら言った。
「誰って……、俺は生浦(いくうら)悠人」
「;koira Irio?」
何だ? 言葉が聞き取れない。周りを囲んだ少年少女達も、彼女と似たような服を着て、手に何か棒のような、杖のようなものを持っている。
「Aris,oll『lkrl; oia..』ark tyenghrt」
誰かが意味不明なことを言うと、悠人の顔をじっと見ていた少女以外の全員が笑った。
「べ、別にこれくらい何でもないわ!」
悠人の眼前の少女が、鈴のような声を怒鳴らせた。
「Olael^O^ aris,all papal」
「www,aris,riokkerd」
誰かがそう言うと、人集りがどっと爆笑する。
悠人の顔を覗き込んでいた少女はアリスというらしい。
とにかく、悠人はどうしてこんな辺鄙なところにいるのか不思議で仕方がなかった。
「ミスター・ホワード!」
アリスと呼ばれている少女は怒鳴った。
喧騒が一瞬で静まり、人集りに溝が出来た。そこから中年の男が現れた。悠人はぎょっとした。彼があまりに強大な存在に見えたからだ。
「(ほう、私の魔力をその歳で見抜くか)」
大きな木の杖を持ち、真っ黒なローブに朱色の縫い込みが施されている。
まるで、この間見た映画に出てくる魔法使いじゃないか。
悠人は急に怖くなった。ここはどこだろう。お母さんは? 俺は誘拐されてしまったのだろうか。
悠人はとりあえず、お母さんにならった通り大人しくしていることにした。
アリスと呼ばれた女の子は、平然と物騒なことを口にしていた。オーガと戦わせてみましょう、とか、崖から落とせば飛ぶかもしれない、とか、そう言って冷ややかな目線を送ってくる。
「何、そう卑下することはない。なかなか素質のある下僕じゃないか」
「でも、戦闘では私たちの前線に出るはずの使い魔がこんな矮小人間じゃ時間稼ぎにすらなりません」
戦闘?
なんだそれ。
ホワードと呼ばれた男は唇を固く結んで首を横に振った。
「一度呼び出してしまったら仕方がない。使い魔は死ぬまで主と共にあるのだ」
「わ、私に使い魔共々早死ねと?」
「いやいや、そのために使い魔特別訓練所があるのではないか」
使い魔?
誰のことだ。
「それによって、現れた使い魔の潜在能力を極限まで引き出し、また使い魔の能力を極限まで高め、我々は最高の魔法使いとなれるのだ。一度呼び出した使い魔を無下にする輩は、いずれ自分自身まで無下にすることになるのだ。心得よ」
「それでも! 人間を使い魔にするなんて聞いたことないです!」
アリスがそう言うと再び周りはどっと笑い出す。アリスは睨みつけるが、それでも笑いは止まらない。
何か嫌な予感がする。
逃げようか、でもどこに?(笑)
悠人は本当に困ったことになったと思った。
「これは伝統だよ。ミス・レギステル。例外は認められない」
中年のおじさんは悠人を杖で指した。
「そんな……」
アリスは半泣き顔で肩を落とした。
「さて、それでは儀式を済ませた者から使い魔に修練が必要だと思う者はこの紙に署名し、別棟にて説明を受けなさい。以上」
アリスは悠人の顔を困ったように見つめた。
- 3 名前: 名無しのサーセン 投稿日:2008/01/17(木) 13:09 ID:j7Eg1c/Y
- なんだなんだ。夢……?
「ねえ」
アリスは悠人に
「ユウト、だったっけ。まぁ、出たとこ勝負は私の望むところだし、せいぜい私を守って死ねるよう努力しなさい」
はあ? なんで、なんで死ななきゃならないのさ。そんなのどう考えたっておかしいよ。この国はもっと平和なはずだよ。
アリスは諦めたように目をつむる。
手に持った、小さな杖を悠人の前で振った。
「Luqal coded a.registal.eliss.bell Fifth pentalias halii enemyl^ alction」
朗々と理解不能な言葉を唱え始めた。
すっと、杖を悠人の視界から落とした。
そして、ゆっくりと近づいてくる唇。
「な、なに」
「いいからじっとして」
軽く叱咤するとアリスがさらに顔を近づける。
「ちょ、うぇ?」
アリスは悠人の顎をつまむとがっと寄せた。
「ん……」
アリスの唇が悠人のそれに重なる。
儀式ってキスのことだったのか。
ああ……、俺のファーストキスは、こんなところで……。
悠人は身動きも出来ずに、ただ、これが悪い夢であることを願った。
アリスが唇を話す。
「終わりました。署名します」
「決断が早いね。アリス」
ホワードはにこりと微笑むと琥珀色の紙をどこからともなく出した。
「夢でありますように、夢でありますように、夢で――」
「っさい!」
用紙とペンを持ったアリスの脚が飛んでくる。
「やあやあ、アリス」
と、突然金髪の少年がマントを靡かせて歩いてきた。
チ、と舌打ちをするアリスは平静に答えた。
- 4 名前: 文才無し 投稿日:2008/01/23(水) 17:04 ID:FgC0YM8s
- 「ごきげんよう、カイン。あなたから話しかけてくるなんて珍しいこともあるのね」
カインと呼ばれたその少年は胸から水色のブローチ、黒いマントに白いブラウスと黒いズボンでいかにもお坊ちゃんな風貌で佇んでいた。
「君は人間を召還したんだってね。おめでとう。話の分かる使い魔だと頭脳戦は有利になる。まぁ、もっとも、使う頭があ・れ・ばの話しだがね」
アリスは苛立つような声でいった。
「それはどうもご丁寧にありがとう。それであなたは一体何がしたくて私に話しかけたのかしら」
カインは意に介さない様子で、
「僕も人型の使い魔を召還したのさ。アリス」
アリスは驚いた表情を隠せず、口を開けた。
「ふふ、いいね、その顔。ま、いずれ近いうちに見ることになるだろう。だが、僕の使い魔ははっきり言ってそこの弱小生物よりは数千倍強いから、あまり自慢しないでおくことにするよ」
クク、と笑いカインは背を向けて歩き出した。
その時、悠人の体が突然熱くなった。
「うあ! うぁああああ」
アリスが立腹したように言った。
「使い魔としての特殊ルーンが刻まれてるだけよ。すぐ終わるわ」
「刻まれる? 一体何が……」
悠人は狼狽した。全身が熱い!
「あのね?」
「なに!」
「使い魔がそんな口聞いていいと思ってるの?」
しかし、熱いのは一瞬で収まった。
「はえ……」
膝をつく悠人にホワードは近づいた。
「ふむ……」
もう何がなんだかわからなかった。
「珍しいルーンだ」
黒いマントの男がそう言った。
「う、帰りたいよぉ」
悠人は思考回路が追いつかなくなって泣き出しそうだった。
「さてと、それじゃあ今日はもう放課後にする」
すると巨大な白い石垣の建築物の方から大きな鐘の音が鳴り響いた。
「アリス、お前は使い魔を訓練所に預けるんだったね」
「はい……」
目元を拭う悠人に一瞥もくれず、アリスは答えた。
- 5 名前: 名無しサーセン 投稿日:2008/01/24(木) 23:47 ID:fxyy9d8A
- 「ふむ、人間でいうところの君の二つほど年上なのだろうが、まだ十にも満たない子だ。命の補償はないと思った方がいいぞ?」
「はい、どの道足手まといになるようでしたら必要ありません」
悠人は酷いと思った。勝手に連れてきて命がどうとか言っている。
「それじゃ、後は預かろう。君は説明を受けに行きなさい」
アリスは淡々と返事を返すと踵を返し宙に浮いた。
口をあんぐりとあけて、悠人はその様子を見つめた。
と、飛んだ? 宙に浮いた?
ありえない。
他の子達も皆ちりぢりに飛んでいく。
ワイヤーや糸のような物はどこにも見あたらなかった。
浮かんだ者達は各々の方向に去っていった。
残されたのは、ホワードというおじさんと悠人だけだった。
ホワードは二人きりになると、溜め息をついた。
「本当に可哀想なことだが、あの娘は容赦というものがないからな……」
中年の黒マントは悠人を哀れむような目で見つめた後、そっと杖を振り上げた。
悠人はそのおじさんの唱える声がまるで子守歌のように聞こえてきて、深い眠りに落ちていった。
生浦悠人。小学三年生の八歳。
運動神経、普通。成績、中の下。賞罰ナシ。人間関係は幼なじみが一人。それ以外の交友はナシ。
先生の評価は『ああ、生浦くんね。負けず嫌いで、大人しいけど、ちょっとヌケすぎてますね』。
親の評価は『やれば出来る子なのにヌケすぎてて結果的に出来ない子』。
ヌケているだけに、動じることが少なく、割となんでも受け入れる方だが、少々情緒が不安定である。
先ほどは突然の異世界に大騒ぎをしたが、普通の子供なら泣いて叫いて腰を抜かすところをあの程度ですませたは、そのような性格によるところが大きい。
そして、なかなか負けん気が強い。そういう意味ではアリスと性格が似ているかもしれない。
そんな悠人は二十分前まで、きちんと地球の上にいた。
体育の授業は外でドッチボールになっていた。
クラスのガキ大将との一騎打ち、悠人は外野にいた。
- 6 名前: 名無しサーセン 投稿日:2008/01/29(火) 16:37 ID:Ou0iFJII
- 最後まで生き残ってやるという気概も初投で粉砕し、飽和状態になった外野の一角で思いに耽っていた時だった。
不意に体が宙吊りになったような気がした。
全身から力が抜け、動かなくなる。
悠人はヌケていたので、何かの病気だと思った。
しかし、足元から強烈な光が差し込み始めたのを見て、悠人は視線をドッジボールに戻すとそこはファンタジーの世界になっていた。
そうして月日は五年の歳月を経た。
「アリス、結局あんたの使い魔はどうしたの?」
机の上で授業に勤しむアリスに隣から声がかかった。
「何度も言ったけど、進級試験直前まで封印してるのよ」
それを聞き、くくく、と笑いを押し殺す生徒達。
「直前まで鍛えるのはいいけどさ、人型が獣に勝とうなんざ、カイン並の使い魔じゃなきゃ無理さ。どうせ訓練所で片腕の一本や二本無くなって返ってくるだろうよ」
後ろにいた生徒が嫌味っぽく言った。
「っさいわね! ちゃんと生きてるわよ!」
「おー、怖い怖い。まぁ、仮に生きてたとしても何の信頼関係もなしに使役できるかねえ」
クラスでアリスの存在は笑いの種だった。『使い魔を使役していないメイジ』等、クラスでアリスだけなのである。使い魔をろくに扱えないメイジなど、メイジ名だたる者としてはあるまじき事実である。
「上等じゃない。嫌ってほど言うこと聞かせてやるんだから」
アリスは啖呵を切ってえんぴつを走らせた。
一方その頃、訓練所で悠人は最終試験の為、心頭を滅却し、無念無想の世界に入り浸っていた。
「ユウト様、出番になります」
美しい案内人によって、ユウトはゆっくりと目を開ける。
ユウトの頭の中は勝利しかない。否、ユウトは勝利を確信している。
五年の月日の中でユウトが学んだことはどんな敵にも弱点は存在し、そこを突けばどんな強敵もひれ伏すということだった。
そして、ユウトにもはや、弱点と呼べるモノはなかった。
訓練所とは名ばかり、実際の決闘は命がけが多かった。しかし、訓練は長い時間をかけて行うので、生きてこの世界を脱する為にはユウトは死ぬ気で鍛えるしかなかった。
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